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スタジオ録音盤の要(かなめ)はベース [分析]

以前「ライブの出来はトミにかかっている」という項目を書いた。
では、スタジオ録音の出来の良し悪しを握っているのは誰だろう?
私はそれはベースの高緑成治その人ではないかと睨んでいる。
(歌の出来の良し悪しは宮本浩次その人です。この場合は演奏面です。)

宮本浩次の弾き語りメインの曲をのぞいて、
エレファントカシマシの楽曲をソリッド(硬質)に鋭くしているのは、
高緑成治の無二のベース・プレイである。

高校時代に大量の脱退があり、
その補填のために高緑成治がベースとして加入、
その結果エレカシは現在の4人のメンバーとなり、
デビューまで進んだことは、よく知られている。

エレカシを現在のカタチに成らしめたその存在は、
いつも寡黙にベースラインを支えている、高緑成治その人である。
エレカシが今のカタチに進化したのは、
成ちゃんがバンドに加入した結果なのである。
それもそのはず、おそらくプレイヤーの技量として一番すぐれているのは、
誰あろう、ベース担当の高緑成治である。
少なくとも、私はそう感じている。
だから、エレカシから高緑成治のベースの音を消したなら、
それは途端にエレカシではなくなるはずである。
また逆に、ベースの音を鳴らすだけで、エレカシの楽曲が浮かび上がる。
それほど重要な要素であるが、控えめに黙々とリズムとメロディが刻まれている。


少し考えればわかるのだが、
冨永・石森・宮本のオリジナル・メンバーだけで、
バントとしてエレファントカシマシが完成していたなら、
オリジナル・メンバーだけでスカウトがかかっていたはずである。
しかし、そうはならなかった。
成ちゃんが加入してはじめてデビューへの道が開いたのは、
エレカシにとってベースの存在がいかに大きいかを知る、
よいエピソードである。

録音盤で名曲と言われる数々の曲。
その楽曲を改めて聴いて見ると、
どれもベースラインが印象的であることに気づかされる。
エレカシはギターバンドであるから、
ついついギターのリフやボーカルに耳を奪われがちだ。
しかし、その背後には必ず成ちゃんのソリッドなベースが鳴っている。

わかりやすいのは【悲しみの果て】
これは言うまでもないだろう。
【生命賛歌】。これも実はベースラインが核となっている。
それから、森鴎外の【歴史】、
このイントロはベース以外にありえない。
同じ『扉』の中の人気曲【パワー・イン・ザ・ワールド】
これもうねるベースラインが実はキモとなっている。
ボーカルの背後で歌っているのではないかと思えるくらい、
メロディアスにつま弾いている。
【友達がいるのさ】。これは言わずもがなだろう。
そして【シグナル】
【シグナル】ではオルガンと共にメロディを支えているのがベースである。
意外にもギターは、リズムと前奏、間奏のリフを鳴らしているだけなのである。
【シグナル】は宮本ボーカル&オルガン&ベースの三重コーラスになっている。

ユニバーサル移籍後の名曲にも耳を澄まして欲しい。
たとえば【笑顔の未来へ】
ここではベースラインは、純粋にリズムを刻んでいるのだが、
曲が弾むその勢いを担当していて、
これがとても素晴らしい。
シングルに併禄のインスト・バージョンを聴いて見ると、
いかに成ちゃんのベースの存在が大きいかがわかる。
【FLYER】についても実は同じ。
ライブと違い、スタジオ盤の【FLYER】の演奏の主役は、
実はベースなのである。
最近で言えば【ハナウタ】
【ハナウタ】ではキーボードと同じテンポで、
低いメロディラインを刻んでいる。
それは混声合唱でいうところのバリトンボイスで、
楽曲の壮大さを演出することに一役買っている。

初期の楽曲についてもそうである。
最近演奏頻度の高い【BLUE DAYS】を聴いてみて欲しい。
実はエレカシの楽曲の印象を強くしているのが、
高緑成治のベースラインであることが判明するはずだ。

ライブのステージになると、
残念ながら前に出る積極性がないことから、
アドリブやパワープレイに出るギター&ドラムスに隠れがちだが、
スタジオ録音を聞き込むと、成ちゃんのベースの位置づけが変わる。
調子のよいときの高緑ベースは、
バリトンのコーラス隊のように歌っているのである。

人気では4人の中で最下位に甘んじるところがあるが、
いやいや、演奏は4人の中でも1番と評価してもいいのではないか。
ライブ・ステージでは、
なにかと控えめになりがちなベースのボリュームを上げて欲しい。
そうすればきっと、トミにも負けないファンが付くはずである。
(了)
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コメント 3

とわ

ほんの最近聞き出したにわかファンです。はじめは宮本先生のヴォーカルに圧倒されるけど、何度も聞いているうちにベースラインがすごく心地いいことに気づいて、高緑さんのことを調べているうちにここにたどり着きました。拝読させていただいて、はたと合点がいきました。ありがとうございました。
by とわ (2010-11-14 10:58) 

黒のシジフォス

とわさん、お初のコメントありがとうございます。

高緑ベースの魅力に賛同いただき、心強く思います。
怒られるのはトミ、いたずらされるのは石くん、
何となく触りがたい成ちゃん、という構図がエレカシの相関図です。
しかし、耳をすますと、よいベースラインが楽曲を支えているんですよ。
最近のライブでは、意識的に宮本御大が高緑ベースを褒めておられます。
今年の日比谷野音では、これでもかというくらい、「ベース!」、
とプッシュされていました。

これに懲りずに、またご意見下さい。
by 黒のシジフォス (2010-11-15 22:15) 

長橋冬子

エレファントカシマシファン歴は2年と浅いのですが ボーカルの宮本さんではなく
リズム隊の高緑さん、冨永さん、ギターの石森さんに填まっています。宮本さんの声も好き[揺れるハート]です。ただ あまりにも取り上げられ方に差があるので、、悶々としています。楽器は弾けません。ベースのこと知って エレカシの音を今以上に聴きたい!思いで、貴方のブログに辿り着きました!成ちゃんのベースのお話、感謝[ぴかぴか(新しい)] 上げられた曲改めて聴いてみます。
by 長橋冬子 (2023-04-30 00:18) 

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