秋の夜空に輝く月を [分析]
「太陽」、「星」に続いて、満を持しての「月」の歌の登場である。
すでに「太陽」の回で触れたことだが、
エレファントカシマシの作品に於ける「太陽」「月」「星」の登場数は、
「太陽」<「月」<「星」
ということになる。
「月」は「太陽」の次に登場回数が多い天体なのだが、
われわれリスナーが思っているよりはずっと登場回数が少ない。
今回のこの企画にあたって数え直してみたのだが、
わずか25曲しかないのである。もっと50曲とか80曲とかあるのかと想像していたのである。
総楽曲数が200曲を超えるエレカシ作品の中で、わずか25曲である。
25曲という数は、イメージする「月」の歌の数量よりだいぶ少なくはないか。
エレカシの夜の歌といえば、「月」と「星」という印象だが、
必ずしも登場しないばかりか、案外に登場回数も少ないのである。
25曲しかないので、曲名を列挙してみよう。
【月と歩いた】 月と歩いた
【月の夜】 月の夜よ
【絶交の歌】 今宵月とありて
【寒き夜】 月を見ていた細き月を
【ドビッシャー男】 真夜中過ぎに都会の月を見て
【今宵の月のように】 今宵の月のように
【風に吹かれて】 きらめく月はそうおまえのナミダ
【月夜の散歩】 君と歩く 月の夜にいつもの川の道を
【恋人よ】 今宵の月は優しさに溢れて見えたか
【おまえとふたりきり】 窓から差してくる月の光で
【愛の夢をくれ】 からみつく月の光りの下で
【眠れない夜】 月が出て表じゃなんと
【孤独な太陽】 月の影あなたの面影が
【ろくでなし】 闇の向こうに月が見えた時
【化ケモノ青年】 月を見てたんだ
【地元の朝】 今日は月がちょっときれいじゃん
【パワー・イン・ザ・ワールド】 何度目の月だ
【平成理想主義】 ヘイヘイ行こう月の浜辺へ
【夜と朝のあいだに...】 月おちて太陽のぼるまえ
【甘き絶望】 蒼き光の月のやう
【シグナル】 はるかかなた 月青く
【さよならパーティー】 月の光窓からさす部屋
【笑顔の未来へ】 月と太陽背中合わせさ
【新しい季節へキミと】 忙しくって夜空の月も見てないぜ
【おかみさん】 月見ておやじさん
「月」がはじめて登場したのはアルバム『浮世の夢』後半の【月と歩いた】。
EPIC期の作品には意外にも4曲しかないのである。
そして、大方の予想通りPONY CANYON期に7曲と倍増する。
次のEMI期になっても10曲と各アルバムに1曲ペースを維持する。
universal期は各アルバム2曲に増えて、CANYON期に近い登場回数である。
エレファントカシマシの作品世界になくてはならない「月」。
初期のEPIC時代のアルバムを除いて、
各作品にほぼかならず1回は登場するほど重要な舞台装置である。
「エレファントカシマシと太陽」でも指摘したように、
「太陽(昼の象徴)」は峻厳過酷なイメージを与えられているが、
その反対に「月(夜の象徴)」には優しさと柔らかさのイメージが与えられている。
もっとも、わかりやすいのは【月の夜】であろう。
「太陽照りし真昼には 俺にくるえや働けや」
「月の夜よ 今日も我と遊ぼうか 弱くやさしき光もて 我をつつみたまえ・・・」
登場する月の様態については、相変わらず言及が少ない。
月の満ち欠けを描写したものは【寒き夜】と【シグナル】くらししか思い浮かばない。
あとの月は満月なのか三日月なのか、上弦、下弦など区別がつかない。
色合いについて述べたのは、アルバム『町を見下ろす丘』の2曲。
「青い(蒼い)」月という表現である。
エレカシの「月」のうたといえば、代表曲【今宵の月のように】である。
この【今宵の月のように】の裏テーマが『奴隷天国』収録の【絶交の歌】である、
たしか「昇れる太陽」TOURのZEPP TOKYO公演2日目にそうMCしていた。
たしかに「今宵の月」というキーワードが登場していること、
月を見て独りごちているところなどは、【今宵の月のように】に似ている。
「今宵の月」という良いキーワードを再発見して、【今宵の月のように】はできたのかもしれない。
同じ『明日に向かって走れ-月夜の歌-』には「今宵の月」が出てくる【恋人よ】もある。
その「今宵の月」が次に登場するのは【シグナル】。
「今宵の月が満ちかける」という歌詞のなかである。
この歌詞は、文面通り一晩のうちに月が満ち欠けすると解釈すると、
やや誇張されたイメージになってしまうが、
「今宵の月」(宮本の人生)が「町見下ろす丘」(住み慣れた町)で満ち欠けしている、
そう解釈するとスッと納得できる歌詞なのだと理解出来る。
【シグナル】と言う作品は、
中年にさしかかるエレカシを見事に描ききった、
これ以上ないという傑作であるが、
その中で「月」が見事な効果を出している。
【月と歩いた】で夜の友としての「月」を発見して以来、
折に触れて「月」と夜を分けて過ごしているエレカシだが、
これからも幾つもの「月」の名曲が生まれていくのだろう。
『明日に向かって走れ-月夜の歌-』が「月」をテーマにしたアルバム。
『昇れる太陽』が「太陽」をテーマにしたアルバム。
と云うように、「太陽」と「月」はすでにテーマ・アルバムが出来ている。
だから、順当にいくと次は「星」をテーマにしたアルバムになるのだろう。
それがどうも次のアルバムじゃないかな、という印象があるがどうだろう。
また、偽・予言者めいた嘘八百を広めてもしようがないので、
ここいらへんで止めておこう。待って、見ていればわかる。
(了)
すでに「太陽」の回で触れたことだが、
エレファントカシマシの作品に於ける「太陽」「月」「星」の登場数は、
「太陽」<「月」<「星」
ということになる。
「月」は「太陽」の次に登場回数が多い天体なのだが、
われわれリスナーが思っているよりはずっと登場回数が少ない。
今回のこの企画にあたって数え直してみたのだが、
わずか25曲しかないのである。もっと50曲とか80曲とかあるのかと想像していたのである。
総楽曲数が200曲を超えるエレカシ作品の中で、わずか25曲である。
25曲という数は、イメージする「月」の歌の数量よりだいぶ少なくはないか。
エレカシの夜の歌といえば、「月」と「星」という印象だが、
必ずしも登場しないばかりか、案外に登場回数も少ないのである。
25曲しかないので、曲名を列挙してみよう。
【月と歩いた】 月と歩いた
【月の夜】 月の夜よ
【絶交の歌】 今宵月とありて
【寒き夜】 月を見ていた細き月を
【ドビッシャー男】 真夜中過ぎに都会の月を見て
【今宵の月のように】 今宵の月のように
【風に吹かれて】 きらめく月はそうおまえのナミダ
【月夜の散歩】 君と歩く 月の夜にいつもの川の道を
【恋人よ】 今宵の月は優しさに溢れて見えたか
【おまえとふたりきり】 窓から差してくる月の光で
【愛の夢をくれ】 からみつく月の光りの下で
【眠れない夜】 月が出て表じゃなんと
【孤独な太陽】 月の影あなたの面影が
【ろくでなし】 闇の向こうに月が見えた時
【化ケモノ青年】 月を見てたんだ
【地元の朝】 今日は月がちょっときれいじゃん
【パワー・イン・ザ・ワールド】 何度目の月だ
【平成理想主義】 ヘイヘイ行こう月の浜辺へ
【夜と朝のあいだに...】 月おちて太陽のぼるまえ
【甘き絶望】 蒼き光の月のやう
【シグナル】 はるかかなた 月青く
【さよならパーティー】 月の光窓からさす部屋
【笑顔の未来へ】 月と太陽背中合わせさ
【新しい季節へキミと】 忙しくって夜空の月も見てないぜ
【おかみさん】 月見ておやじさん
「月」がはじめて登場したのはアルバム『浮世の夢』後半の【月と歩いた】。
EPIC期の作品には意外にも4曲しかないのである。
そして、大方の予想通りPONY CANYON期に7曲と倍増する。
次のEMI期になっても10曲と各アルバムに1曲ペースを維持する。
universal期は各アルバム2曲に増えて、CANYON期に近い登場回数である。
エレファントカシマシの作品世界になくてはならない「月」。
初期のEPIC時代のアルバムを除いて、
各作品にほぼかならず1回は登場するほど重要な舞台装置である。
「エレファントカシマシと太陽」でも指摘したように、
「太陽(昼の象徴)」は峻厳過酷なイメージを与えられているが、
その反対に「月(夜の象徴)」には優しさと柔らかさのイメージが与えられている。
もっとも、わかりやすいのは【月の夜】であろう。
「太陽照りし真昼には 俺にくるえや働けや」
「月の夜よ 今日も我と遊ぼうか 弱くやさしき光もて 我をつつみたまえ・・・」
登場する月の様態については、相変わらず言及が少ない。
月の満ち欠けを描写したものは【寒き夜】と【シグナル】くらししか思い浮かばない。
あとの月は満月なのか三日月なのか、上弦、下弦など区別がつかない。
色合いについて述べたのは、アルバム『町を見下ろす丘』の2曲。
「青い(蒼い)」月という表現である。
エレカシの「月」のうたといえば、代表曲【今宵の月のように】である。
この【今宵の月のように】の裏テーマが『奴隷天国』収録の【絶交の歌】である、
たしか「昇れる太陽」TOURのZEPP TOKYO公演2日目にそうMCしていた。
たしかに「今宵の月」というキーワードが登場していること、
月を見て独りごちているところなどは、【今宵の月のように】に似ている。
「今宵の月」という良いキーワードを再発見して、【今宵の月のように】はできたのかもしれない。
同じ『明日に向かって走れ-月夜の歌-』には「今宵の月」が出てくる【恋人よ】もある。
その「今宵の月」が次に登場するのは【シグナル】。
「今宵の月が満ちかける」という歌詞のなかである。
この歌詞は、文面通り一晩のうちに月が満ち欠けすると解釈すると、
やや誇張されたイメージになってしまうが、
「今宵の月」(宮本の人生)が「町見下ろす丘」(住み慣れた町)で満ち欠けしている、
そう解釈するとスッと納得できる歌詞なのだと理解出来る。
【シグナル】と言う作品は、
中年にさしかかるエレカシを見事に描ききった、
これ以上ないという傑作であるが、
その中で「月」が見事な効果を出している。
【月と歩いた】で夜の友としての「月」を発見して以来、
折に触れて「月」と夜を分けて過ごしているエレカシだが、
これからも幾つもの「月」の名曲が生まれていくのだろう。
『明日に向かって走れ-月夜の歌-』が「月」をテーマにしたアルバム。
『昇れる太陽』が「太陽」をテーマにしたアルバム。
と云うように、「太陽」と「月」はすでにテーマ・アルバムが出来ている。
だから、順当にいくと次は「星」をテーマにしたアルバムになるのだろう。
それがどうも次のアルバムじゃないかな、という印象があるがどうだろう。
また、偽・予言者めいた嘘八百を広めてもしようがないので、
ここいらへんで止めておこう。待って、見ていればわかる。
(了)
コメント 0