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2011年新春武道館(後編) [ライブ]

2011年 1月9日 新春武道館公演 (後編)

新春武道館公演 (前編)は こちら

1月9日(日)、日本武道館公演の鑑賞記になります。
30曲を15曲ずつにわけて、前・後編ということに相成ります。
前編はこちらでお読みください。

後編では公演の本編16曲目から、アンコールの最終曲までを扱います。
公演開始から1時間半ないし2時間ほど経過したところなので、
場内は完全に熱気に満ちて、観客はステージに魅了されはじめた頃です。
(一部の方々は、ちょっとキャリア・バランスが悪いので、不満が溜まったかもしれませんね。)

リハーサルで入念にチェックしていた、ストリングス隊がこれでもかと活躍し、
お正月の特別公演という色味が増し、キラキラして、
「3000人公演」の時代とは隔絶の感ある、観客にやさしい公演となった。

機嫌悪く、緊張感を分け合う、ヒリヒリとしたライブも意味があるとは思うけれど、
できうるならば刹那の一期一会は、機嫌よく「快」の気持ちを分け合いたいというのは、
人情ではなかろうか。

EPIC 時代のエレカシが前者として卓越していたとするならば、
現在(universal sigma時代)のエレカシは後者として卓越していると、私は考えます。
それは「丸く」なったという面もあるでしょうが、
経年による老化を背負いつつも、新しくカタチを変えていくという進歩の姿勢だと思います。
それは演奏を聞けばよくわかる。
未だに一歩一歩、グルーブ感が増しているように感じられるからです。

セットリストに不満の向きが、オーラスの【待つ男】は聞けてよかった、
そう嘆息するのは、
実は過去の楽曲を今やると力がいや増しになってる事実があるからでしょう。

EPICやEMI作品のファンを満喫させるには、
それ相応の場を設けないといけないのだろう、私は思ってしまいます。
ひとつには大阪と日比谷の野音があるのですが、
全国に散らばるファンに対しても、ゲキ渋セットの全国ツアーを開催してもよい気がします。
それは、新曲やuniversal作品をやってはいけないのではなく、
現在のバランスを旧作と入れ替えて、8割過去のレア曲、2割新曲みたいにしてみる。
そうすると、逆に新曲の位置づけが返ってEPICと同一地平に感じられる、
そんな手助けになる気がするからです。

本年の武道館公演は長尺公演となったわけですが、
不思議と「ええっ、もう終わってしまうの(短すぎる)」という声が多くて、
2009年の「きっちり、決まった」感とは違う印象のようでした。




金原千恵子ストリングスとは、オープニングをのぞくと全11曲共演したことになる。
楽曲は以下の通り。
【奴隷天国】 【旅】 【彼女は買い物の帰り道】  【ネヴァーエンディングストーリー】
【シャララ】 【明日への記憶】 【笑顔の未来へ】 【いつか見た夢を】 【桜の花、舞い上がる道を】
【平成理想主義】【翳りゆく部屋】 
前回は16人のストリングス隊だったが、今回は少し減って14人。
その代わり、前回5曲程度だった共演が2倍に増えて11曲となった。
賛否両論あるだろう【奴隷天国】がものすごい確信犯的な挑戦で、好ましく感じた。
逆に、【旅】と【いつか見た夢を】はバンド・オンリーのほうがよかったかな、という印象である。
なんでストリングスを付けなかったのかなと思ったのは、
【赤き空よ!】 【幸せよ、この指にとまれ】 【ハナウタ】
この3曲。ストリングスがぴったりしそうな楽曲だからである。


SET LIST

OP オープニング
1 奴隷天国
2 今はここが真ん中さ!
3 脱コミュニケーション
4 moonlight magic
5 旅
6 九月の雨
7 翳りゆく部屋
8 歩く男
9 珍奇男
10 赤き空よ!
11 夜の道
12 赤い薔薇
13 幸せよ、この指にとまれ
14 ハナウタ~遠い昔からの物語~
15 彼女は買い物の帰り道
16 ネヴァーエンディングストーリー
17 シャララ
18 明日への記憶
19 笑顔の未来へ
20 いつか見た夢を
21 桜の花、舞い上がる道を
22 朝(SE)
23 悪魔メフィスト
-------アンコール1---------
24 平成理想主義
25 シグナル
26 四月の風
27 俺たちの明日
28 ガストロンジャー
29 ファイティングマン
-------アンコール2---------
30 待つ男





16 ネヴァーエンディングストーリー
金原、笠原ご両人は、ステージから直接オーケストラピットに移動する。 そして、宮本がストリングス隊を紹介する。が、二人以外の名前が出てこない。 総合司会、そういう時は暗記しなくても、書き付けを見てでも全員紹介したほうがよい。 曲紹介なく、次の曲へ。 「日曜日の街」という歌詞からこの選曲したのか、 それとも、儚さと強さが重なるラブソングを、【彼女】のあとに配置したかったのか。

17 シャララ
ギターを抱えたまま、総合司会はステージ右前方の方に歩み出して、ジャジャジャと鳴らす。 そして、最近は耳慣れてしまった感さえある、EPIC時代のストリングス付きの楽曲【シャララ】。 2009年の武道館ほどの驚きはないが、ストリングスつきの名曲として位置づけが確固とした印象がある。

18 明日への記憶
新作アルバム収録曲中で、もっともストリングスがぴったりくる楽曲。であるだけに、無理のない自然なストリングスとの共演になっていた。ストリングス付きで聞くと、バンド・サウンドでの【明日への記憶】とスケール感がまったく違う。ストリングスがつくと、大画面のスクリーンで観る映画のように歌詞の世界観が、立体的に広角に迫ってくる印象がある。今回の武道館のなかでも屈指の一体感だったと思う。プログレッシブ・ロックのようになっていく後半が、オリジナル・アレンジよりもだいぶ延長されて、「チクタク」も多めに歌われていた。歌詞の足りない部分は、アドリブの歌詞とスキャット風に「ナナナナ」が足されていた。フェイド・アウト風ではなく、ストリングスが弾ききって終わった。

19 笑顔の未来へ
宮本がギターを奏でる前奏ではじまる。この曲もまだできてから数年であるが、すでにライブ定番曲の風格と、いつやっても標準以上のクオリティを出す名曲の域に達している。この曲はボーカルのボリュームが大きすぎて、バックの演奏がやや聞こえずらかった。個人的には、もう少しストリングスのボリュームをあげて、バランスを取って欲しかった。おそらく、サウンド・バランスが【明日への記憶】のままだったのだろう。後半の大サビで、観客席に手拍子が起こる(総合司会が促したのだが…)。この曲でも石森ギターがキュンキュンとよくうなりを上げ、好調ぶりを示した。

20 いつか見た夢を
【いつか見た夢を】ストリングス・バージョンは、私にはあまり魅力的ではなかった。というのは、この楽曲がバンド・サウンドとして鳴ることの魅力に満ちた曲であるから、ストリングスを足してしまうと、楽曲の持っているその力が見えにくくなってしまうからである。宮本ボーカルを中心としたグルーブで、演奏のテンションやスピードが決まっていくこの曲に、スコア(譜面)のあるストリングスがついて行くのはかなり難易度が高い。実際、今回の公演でもスピードがこまめにかわることに、ストリングスが対応しきれていない印象を受けた。だから、テンポが安定しているストリングスと、部分部分でテンポが変わるバンドとのあいだで、二層のサウンドが鳴っていた気がする。この曲はストリングス・バージョンではないほうが魅力的である。そもそも、トミのドラムが魅力的にパワフルだから、ストリングスは屋上屋、過剰装飾である。

さっき上の方まで行ったんですよ。けっこう見えますよね。
ストリングス・チーム紹介。

「エブリバディ、今日はようこそ。ありがとう。」

じゃあ、キメたいと思います。

21 桜の花、舞い上がる道を
「じゃあ、舞い上がって生きてこうぜ」のあと、「さぁくうらの~」と【桜の花、舞い上がる道を】。この曲は文句なく、ストリングス・アレンジがぴったりくる楽曲である。最近ファンになった人や、久しぶりに戻ってきたファンの方にはわかりにくいだろうが、この桜のうたはレコード会社から発注された春歌を、エレファントカシマシが咀嚼してつくりだした佳曲である。本当のことをいえば、そんなに好きではない「桜」の歌も、こうやって見事な景色として歌にできる職人としての技量、それこそがベテランの本領なのだろう。発注でつくった作品にもかかわらず、歌い込むほどに、何だかエレファントカシマシらしい色に染まって、ファンからもバンドからも愛が深まって来ているようである。歌っているうちに愛着が生まれ、「いい歌じゃないか」と思ってしまっているのだろう。この曲ではすべての音域で、歌声が伸びて気持ちよさそうだった。

22 朝(SE)
本篇終了と思わせる暗転があって、しかし楽器のチューニング直しなどのライトがなく。 しばらくして、アルバムでインタールードになっている【朝】が鳴り始める。 休憩でのトイレ・タイムを待っていた人たちが、思いあまって通路へ出てしまう。 朝を告げるスズメのさえずりが、だんだん不気味に増えて、ヒッチコックの『鳥』のようなイメージに変わっていく。

23 悪魔メフィスト
ステージ両脇、後方にあるスクリーンに日食らしき映像が流され、ドーン、ドーンと雷の音。フラッシュライトが激しく点滅される。そして、悪魔メフィストが召還される、怪しきギターリフが始る。悪意たっぷりの宮本のボーカルは、【桜の花、舞い上がる道を】の華やかさをひっくり返すほど歪んだ声に満ちている。歌というよりも呪詛に近いような禍禍しさを込めている。そこから、日々、日常の光景に飛翔する。「俺の歴史は傷だらけフリーダム」が高らかに響く。前半でパワーを出し過ぎて、後半がよれたところが残念ではある。それらは、このパワーを必用とする楽曲の初披露であるだけに、仕方のないことかもしれない。

-------アンコール1---------

24 平成理想主義
トミを先頭にして、バンドメンバーだけが先に入場して、音合わせのような、カオティックな音の洪水があふれる。そこに石森ギターがフレーズを見つけて奏で始めると、徐々に演奏がまとまっていく。ストリングスがそれに加わり、【平成理想主義】の導入が整うと、宮本が入場してきて歌い始める。アルバム『風』に収録曲の大名曲【平成理想主義】は、EMI時代制作の楽曲のなかでも随一の大きさをもつ作品だ。この曲もまたストリングスの華やかさが華美になりすぎない、バンド・サウンドとストリングスとのバランスがとれた、名演だった。宮本は、ボーカル・ディレイさえもうまく使いこなして、思いに走りすぎないように抑制を効かせつつ、すばらしいロック歌手ぶりを発揮していた。

25 シグナル
ストリングス・チームの出番が終わって、ゲキ渋のバラード。【シグナル】ではオルガンを鳴らす、蔦谷好位置のサポートが光っていた。それから、何度も言うが、石森ギターが風景を描き出すような、素晴しいフレーズを鳴らしていた。丁寧に丁寧に鳴らしつつも、ちゃんと男らしく力強い、そんな音色だったから、耳を奪われてしまった。ストリングスが下がってしまったから、スケール・ダウンするというのではなく、それと同等かあるいはスケール・アップするくらいの大きな厚いサウンドが鳴っていた。これこそが、現在のエレファントカシマシが獲得した大きな音楽世界なのだろう。

MC(契約が切れたときの話)
武道館らしい、演奏会らしいよいライブに、すぐに慣れてくれてありがとう。

26 四月の風
途中で歌詞飛びしてしまったのが残念。だが、今回は30曲も演奏曲があって、全体としては歌詞まちがいや歌詞飛びは少なかったような気がする。この曲でも蔦谷オルガンと石森ギターの共演が見事だった。石君がはつらつとプレイしていると、明るい曲の前向きな感じがより大きく出る。

27 俺たちの明日
「お正月なので」という前振りから【俺たちの明日】へ。昼海アコギ、宮本&石森エレキ・ギター。この曲もやや歌詞よれがあったが、AメロBメロを抑え気味にして、サビで一気に感情を爆発させるような、緩急をつかって盛り上げた。さすがに2時間以上声を張り続けてきたので、声にかすれが混じっている。ここでも石森ギター大活躍。宮本は歌に専念したかったのか、曲の途中でギターを肩から外して放り出してしまった。天井ライトをすべて点灯する演出は、最近の流行りだとは思うが、マンネリすぎて「驚き」や「感動」は伝わらないと思った。というのも、あからさまに泣き所だという演出は、かえってあからさまゆえに観客の情感を下げる効果しか出さないからである。演出効果というのは難しいものである。

28 ガストロンジャー
楽器を持ち替える時間がしばし空いて、【ガストロンジャー】。この日の観客の雄叫びはなかなかにすごかった。ライブハウスのツアーに匹敵するか、それ以上の雄叫びが客席から聞こえていた。つまり、椅子席のコンサートながら、止むにやまれぬ思いが、観る側にもあったということの証明だろう。それがコーラス隊のように聞こえていた。「さっき自問自答の末ひゃく万回目の結論を下しました」というのが、アドリブフレーズだった。最近は「楽屋で結論しました」が多かったので、新鮮だ。間奏のところで、「1万回目の旅の始まり」とワンフレーズ入れてきた。「お互い体力勝負だな。最後の勝負だな」。

29 ファイティングマン
「OK石君」のきっかけより前に、石森ギターがフライング・スタートした【ファイティングマン】。総合司会にやり直させられるんじゃないかと冷や冷やしたので、よく覚えている。「がに股奏法」で行けと指令が下る。中央ポジションから解放されたように、ステージの右端、左端に動き回る。「体力勝負」と口にしたように、息も切れ切れに残りの力をふり絞って叩きつけてくる、若々しいボーカル。

-------アンコール2---------

30 待つ男
【悪魔メフィスト】ばりの凄味とえぐ味のある【待つ男】。「富士に太陽ちゃんとある」が正月そうそうから聞ける人々は縁起がいい。ファン・ブログを見て回ると、宮本が涙を浮かべていた(流していた)という記述をみかけた。残念ながら、当方のサイド席からは正面を見ることが出来ないので、そうした細かな表情は確認できなかった。乾燥する冬場に、30曲も絶唱したとあって、ガラガラになる声帯をふりしぼりながら、最後の力を放ってくる男のオーラに打たれるばかり。昨年のお正月ライブのラストもこの曲だったが、今年の新春ライブもこの曲がラスト。新春ライブの定番曲と呼んでもいい、力と勢いと華やかさと混沌の楽曲ではないかと思った。一年を開けるのに相応しい曲だ。(厳密に言えば、年明けをしたのは幕張のCOUNTDOWNライブである)。



かくして、エレファントカシマシとそのファンの新年の集いは過ぎたのである。(了)
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