SSブログ

キーボード・マガジン 2011年夏号 [記事&インタビュー]


Keyboard magazine (キーボード マガジン) 2011年 07月号 SUMMER (CD付き)[雑誌]

雑誌名: 『キーボード・マガジン 2011年 SUMMER』(6/10売号)
出版社: リットーミュージック
内容:  宮本浩次×蔦谷好位置 「ボーカリスト×キーボーディスト対談」
価格:  ¥1500



6月初頭発売の『キーボード・マガジン』記事を読んできた。
特集記事の一部なので分量としては多くないが、
内容的にはなかなか興味深い内容だった。
(ネタバレ防止のため感想は追記に記載)

本日(2011年7月3日) 深夜0:00~深夜2:00 CS-TBSチャンネル

「日比谷野外大音楽堂2010」
短縮版(ディレクターズ・カット版)が再放送。
 (CS無料開放デー適用)

CS-TBSチャンネルが受信できる環境の方は、
録画および試聴できるようです。



『キーボード・マガジン』は鍵盤奏者の専門誌なので、
鍵盤を弾かない人にはやや敷居が高い内容が多い。
また、それだけに発行部数が少ないのか価格も高めである。
その代わりに特集記事に対応したCDを付けて、付加価値を高めている。

宮本浩次×蔦谷好位置の対談を掲載しているのは、
「歌とキーボード」という特集記事の第一部、
「Part1 対談編~相互作用する唯一の関係性に迫る」の一篇。
ほかに「今井美樹×河野圭」、「宇都宮隆×浅倉大介」らの対談が併載されている。

内容はこれまでの対談で何回もあったように、
宮本から蔦谷好位置へ、蔦谷好位置から宮本への尊敬の眼差しに満ちたもので、
言葉だけを見ているとある種の「恋愛関係」でもあるかのような誤解さえ生みそうなほど、
お互いがお互いを「大好きだ」と言い合っている。
それは一歩まちがうと「同性愛」的に思われてしまいそうだが、実際はまったくそんなことはない。
むしろ、共闘する同志、つよく結帯(けったい)された職人関係のようなそれである。
まちがっていることをまちがっていると言いあえる、
高い品質の要求をお互い出し合える、そんな関係性である。

年下である蔦谷好位置が、宮本浩次に対して直言するそれは、
いちいちもっともなことが多いが、これまではあまり指摘を受けてこなかったものに思われる。
バンドの一体感がいまひとつな時に歌唱力で強引にもっていくのはよくない。
この直言は、ファンなら一度は感じたことがあるだろう。
全身全霊で歌うことに尊敬を示しながらも、
より聴衆に届けるためには、7割8割の力で歌う方がよいこともある(それだけがすべてと言っていない)。
これもまた、納得の直言である。

蔦谷好位置が指摘するように、
エレファントカシマシというバンドは良さも悪さも、宮本浩次の牽引力にあった。
それゆえに、本来はメンバーの演奏力に任せるべきところも、
宮本の歌唱や演奏が独占してしまうような場面が数多く見られた。
そのことによって、メンバーは宮本に譲ってしまって、自分の主張を抑えることが多くなった。
その悪い意味の「ワンマン・バンド」の風貌が、ここ最近変わりつつある。
蔦谷好位置や外部プロデューサーの意見を納得することによって、
宮本浩次も、バックの石森・冨永・高緑のメンバーも、意識が変化したからだと思う。
現在、バンド史上でもっとも充実した演奏力が発揮されているのは、
蔦谷好位置の参加によって、バンドがよい関係性を取り戻せたからではないか。
「これまで5年間もいっしょに仕事をした人(プロデューサー)はいない」、
と宮本がその信頼感を述べるように、
蔦谷好位置という人がエレファントカシマシにもたらした化学変化は、
良い方向に作用しているに違いない。

蔦谷好位置の鍵盤やプロデュース(作風)については、
聞き手によって好き悪いがあるだろうが、
ファンそれぞれの大好きな曲がライブで演奏されるのを聞けばわかるが、
どの時代の曲も新鮮に「新しい命」をもって再現されていることからして、
蔦谷氏の参加はエレファントカシマシを活かしこそすれ、殺していない。

どのバンドでもそうだが、
一生信頼していけるプロデューサーに出会えることがあるが、
もしかしたら、エレファントカシマシ(宮本浩次)にとってのそれが、
蔦谷好位置であるのかもしれない。
ただ、それはそれとして、常にあたらしい境地を探して前進するのがエレカシ。
「頼りすぎてしまうのが良くない」と宮本が自戒するように、
そのことはこれからの全作品を蔦谷プロデュースでやることと同義ではないだろう。
バンドのセルフ・プロデュースでやることもあるだろうし、
蔦谷氏以外の外部プロデューサーを中心にしてやることもあるだろう。
それでも、精神的な拠り所として蔦谷好位置の存在感は大きいのだと思う。
『キーボード・マガジン』誌上の対談は、そのことを如実に示している好例と言える。

エレファントカシマシのファンならば読んでおいて損はない。
(出版社は購入をすすめるだろうが、私は買うことは躊躇した。)
ただ、蔦谷好位置と感覚的に相性が悪い人は読まない方がよい。
宮本浩次との蜜月な関係性は、そうした人たちには苛立ちにしか感じられないからだ。
気分を悪くするようなものを、あえて目にすることはない。
しかし、そうした悪感情に落ちてしまう人たちは不幸だと思う。
今がすばらしいバンドの充実を後で知るようなことがいちばん不幸だからである。
どの時代の曲も「今」たしかにすばらしいのだ。
(了)
nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 2

FACT

この雑誌を読んで昨年11月に放送されたInterFMのほぼ週刊〇〇ナイトでの二人の会話を思い出しました。当時の発言と今回の対談の内容にぶれはなく、変わらぬ関係性なんだなと思ったりしました。

わたしはそれこそ昨年のシングルリリースラッシュのころからファンになった新参者ですが、みなさんよく言われるのが、今がバンドにとって最高の状態であると。

2006年頃のライブ(@Shibuya AX)をYoutubeで見ると明らかに今とは違うなと思ったりするのですが、黒のシジフォスさんがおっしゃる宮本のワンマンぶりが出すぎた状態ってわけなんでしょうかね。。。

このバンドの変化、非常に興味深いですし、今後どのような変化を見せていくのか目が離せない感じがします。

今回の書評、整然とまとめられていて感服しました。
by FACT (2011-07-07 05:31) 

黒のシジフォス

> FACTさん、コメント多謝です。

FACTさんは、案外と御新規さんなのですね。
それはそれはまだまだ掘り甲斐のあるファン・ライフの途中、
あれやこれやと新しいエレカシに出会って、驚いて下さい。
たぶん、EPIC時代のビデオ集には驚いたことでしょう。

私が宮本のワンマン・バンド状態というのは、
私が「宮本ソロ・ワーク」と呼んでいる
『愛と夢』『good morning』『ライフ』の時期、
および『扉』を出したあたりのツアーのことですね。
EPIC時代を知らない私ですが、
トミに辛くあたる総合司会の姿をよく見ました。
成ちゃんや石くんもたまに叱られてたかな(本気で)。
会場が凍るくらい不機嫌な時もままありました。

それに比べれば、現在は何と幸福なことでしょう。
バンドも聴衆も共に喜びに溢れているのは、これはまちがいなく黄金期。
Mixiの雑談板で見たのですが、
昨年のRSRフェスで同じステージに立った山下達郎から褒められていたそうです。
褒めていたのは彼のラジオ番組「サンデー・ソングブック」内のようですが。
山下達郎に褒められるのは、なかなか光栄なことですよ。
大変な音楽通ですからね。

お褒めの言葉は励みとなります。ありがとうございました。
by 黒のシジフォス (2011-07-08 21:14) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。