SSブログ

2012年渋公新春公演・2日目の感想(後編) [ライブ]

すでに分析や雑情報は項目として立ててあるので、
楽曲ごとのレポート以外をお探しの方は、そちらへどうぞ。
2012年新春ライブ 於渋谷公会堂 分析
「エレカシ短歌」で振り返る新春ライブ(コンサート)2012 1日目
「エレカシ短歌」で振り返る新春ライブ(コンサート)2012 2日目
新春ライブ2012に関連する雑話

導入

本編 第二部

 再登場した宮本は黒シャツに衣装替え。「第2部のはじまりです」。「お手洗いに行きたい人は今のうちに席を立って行ってきて下さい」。と初めて聞くような、場内アナウンス的なMCを総合司会がする。そもそも、宮本氏は開演中にステージにわかるように席を空ける観客が大嫌いで、これまでのライブでもあからさまに光を入れて開場を出て行く客をなじったことが何回もある。(席を外してはいけないというのではなく、ステージの演者の気持ちを台無しにするような、不作法な退出の仕方に腹を立てていたのである)だから、まさか本人から「どうぞご不浄へ」的なガイダンスがあるとは想像だにしなかったのである。ただ、言うならば、「第1部終了」のときに「しばし幕間(まくあい)を挿みますので、お手洗いに行きたい方は…」とMCしたほうが親切であったと、個人的には思います。観客は2部構成ということをまったく知らなかった上に、「第1部終了」もそれほどはっきりした音声ではなかったので、アンコール待ちをしていた観客も多かったと思う。



 2012年渋公新春公演の感想  前編へ



    ―第二部―
19. Sky is blue
20. ワインディングロード
21. 東京からまんまで宇宙
22. ハナウタ~遠い昔からの物語~
23. 桜の花、舞い上がる道を(with Strings Section)
24. パワー・イン・ザ・ワールド(with Horn Section)
25. ガストロンジャー
26. ファイティングマン
    ―アンコール1―
27. 悲しみの果て
28. so many people(with Horn Section)
    ―アンコール2―
29. 待つ男

    ―第二部―

19. Sky is blue

 この曲の前、第2部の頭のことだったと記憶するが、舞台奥の壁面のカーテンが開き、演出用のホリゾント(演劇用語で照明効果を出すための壁面の幔幕)が出てきたので、もしかして【悪魔メフィスト】かなと一瞬早とちりした。しかし、ボトルネックを嵌めた総合司会が、ギターをキュルキュルと鳴らしはじめたので、【Sky is blue】だなと、思い直す。ブルースの凄腕ギタリストと比べてしまうと、まだ及ばないけれど、演奏するたびに板に付いてくる宮本浩次のスライド・ブリージャーに、こころ高ぶる。休憩をはさんでの演奏だけに、歌声に力強さが戻っている。まさに鋼鉄の声帯である。私が見つけた空耳「土産レバー」がよりはっきり聞こえて、やっぱりそう聞こえるなとひとり苦笑しそうになった。「見上げれば」とわかっていても、「レバー」に聞こえてしまうものはしようがない。悪いすり込み現象である。ホリゾントは青い照明で青空が演出されていた。(2010年の新春ライブでは【赤き空よ!】で似た演出があったのを、いまさら思い出した)

20. ワインディングロード

 アコギに持ち替えて、すぐにイントロへ入る。私にとっては初めて聴く、生の【ワインディングロード】。現在のところ最新曲であるこの曲がはじまると、客席から歓声がワッと起る。メロディのなかにたっぷり盛り込まれた歌詞の文字量を生で聴いてみると、やはり息継ぎの間がない。ブリッジなども含めライブ映えする佳曲であるが、録音版とちがう歌い方を見つけないと、後半になるにつけ息が苦しくなる。録音版を再現しようとした歌い方をすると、どうしても息の苦しいところが平板な歌い方になるので、ライブ用に息継ぎを見直せばメリハリがついて歌唱が磨かれてくるはずである。今のところは、まだまだ発展途上の印象がした。

21. 東京からまんまで宇宙

 【ワインディングロード】と対を直す楽曲と、作者宮本自身が明言する【東京からまんまで宇宙】。シングルと同じ曲順で演奏されると、いや増しに、その意味がよくわかる。【ワインディングロード】に比べると音数と言葉数に差がないので、歌いやすそうであった。この曲で苦しかったのは歌詞である。ポイント、ポイントでちょっとした歌詞の間違いをやってしまった。新曲なのに、もったいない。ただ、この楽曲の魅力は繊細さではなく、イメージの力で歌詞や楽曲が飛躍するダイナミックさなので、そのダイナミックさはきちんと表現されていた。この曲もまたライブ定番として、これからもっともっと魅力を増しそうな作品だと感じた。当ブログのシングル評ですでに詳しく述べているように、この楽曲の歌唱はアルバム『東京の空』の頃を彷彿とさせる印象で、音楽的には【FLYER】や【おかみさん】のようなごりごりなギターサウンドであり、EPIC時代の作風とuniversal時代の作風が違和感なくミックスされているのがよくわかった。

22. ハナウタ~遠い昔からの物語~

 「ワン、トゥ、ワン、トゥ、スリー、フォー」のカウントから、鍵盤のイントロが印象的な【ハナウタ】へ。メロディアスで抒情的なエレファントカシマシの新しい定番曲となりつつある作品である。この曲はタイアップの依頼でつくられた作品であるが、そのことがまったく捨象されるくらい、作品の完成度が高い。歌詞の内容は万葉集のような古代日本の歌謡を想像させる、太古と今を花や愛を通じてつなげる内容である。そのあきらかなフィクション性がエレファントカシマシの作品のなかでは異色である。【おかみさん】の「2100年」とはまた別のフィクション性をもった作品である。この歌が演奏されると、ステージも明るくなるし、客席の雰囲気も明るくなる、すごく柔らかい温かさを感じる、春の陽ざしのような作品である。エレファントカシマシには珍しい、結婚式によく合いそうな作品である。曲間のブリッジでの蔦谷好位置のコーラスも板についてきて、宮本浩次といいコンビとなってきている。後奏のスキャットも御機嫌で雰囲気も抜群であった。
イントロで成ちゃんのぼうしをとってペットボトルの横に置き次の曲前にどうも、って感じで成ちゃんに返していた。(典拠223. 桜の花、舞い上がる道を(with Strings Section)

 「正月にとってもふさわしい曲、聴いて下さい」の導入ではじまる。ストリングスつきの【桜の花、舞い上がる道を】。初披露の名古屋E.L.L.の4人の演奏を聴いたときは、いったいどんな風にファンに受け入れられていくのか、正直不安であったが、武道館公演やアルバム・ツアーを経て、どんどんとファンに浸透していき、楽曲制作のいきさつ(レコード会社からリクエストされた「桜」のうた)を忘れてしまうほど、エレカシの桜の歌として愛されている。この曲もお正月に披露されることが多く、【真冬のロマンチック】や【待つ男】などと並んで、新春ソングの新定番となりつつある。「歩いて行こうぜ、エブリバディ」。

24. パワー・イン・ザ・ワールド(with Horn Section)

 宮本がエレキギターに持ち替えて、印象的なリフを奏ではじめる。【パワー・イン・ザ・ワールド】である。すでに別項目で考察しているように、本来はこの曲の前に【so many people】が演奏されるはずであったと、家に帰って理解して、ホーン・セクションがやや驚いた表情で吹き始めた意味が、そのことで理解された。(逆に、何ごともなく演奏に付いていくバンドの臨機応変さにすごいなと、そっちに驚く)
 豪華ブラス付の【パワー・イン・ザ・ワールド】の格好よさに、うれしくなったのだが、ブラスのアレンジはもう少しファンク・バンドのように、輪唱的で、歌手の歌にブラスが応えるみたいな双方の応酬になったほうが、格好いいアレンジだろうと思った。刑事ドラマ『太陽に吠えろ』のテーマ(作曲・井上曉之)ではないが、ブラスが前に出るときはギターは一歩下がってリズムに徹したほうが、全体としてすごく格好よくなる。その意味で、もう少しファンク・ブラスとしてのアレンジを深めてくれると、もっともっと格好よくなると思った。原曲のギター・アレンジを重視しすぎたので、ギターの演奏とブラスの演奏がかぶってしまった印象がある。

25. ガストロンジャー

 【パワー・イン・ザ・ワールド】に演奏終了後、間髪いれずに【ガストロンジャー】へ。第二部後半にたたみかけて来た、ライブ定番曲。「これがいいのかと問われれば」に対して「何だこりゃあ」に苦笑した。場内、大盛り上がりの【ガスト】。客席全体の腕がサビの盛り上がりで一気に林立して、お祭り会場のような熱気に満ちた。「江戸時代からかわらねぇんだよ」「破壊されちゃうんだって、ダメなものは全部」。今回の結論は「さっき楽屋で」だった。最近定番となりつつある「一万回目の…」は「百万回目の…」にパワーアップしていた。石くんを煽ったあとに、蔦谷好位置をスキャットで煽るというのも、この曲のライブ版のお約束になりつつある。「みんないい顔してるぜ」のコメントが今回はここで飛び出す。

26. ファイティングマン

 「石くん、ファイティングマン」のいつものかけ声と共に【ファイティングマン】に突入しようとするが、音が鳴らない。アンプ・トラブルのようである。宮本がすぐに「俺のアンプ使え」と助け船。しかし、ローディーが出てきてさらに石くんのアンプをいじってなんとかしようと奮闘、なんとか音が出るがうまくない。そこでさらに宮本が「俺のアンプを使え」とライン用のコードを石くんに渡して、石くんがそれをギターに繋ぐ。客席の声援が石くんに飛ぶのを受けて、「さしあたって石くんは関係ないから、アンプがんばれ、だから…」と。音が出るのを確認して仕切り直し。ギターリフを鳴らしはじめると、いつものような音じゃない、ギターのトーンが違うよう、宮本がダイヤルをいじっていつもの音に直す(といってもかなり音がいつもより低めで、かなり設定は異なる印象)。それにめげることなく【ファイティングマン】がはじまる。
 トラブルで少し間が空いたのだが、そのおかげで宮本のよい休憩となったようで、声に張り艶が戻ってきた印象がした、「災い転じて福となす」の言葉どおりの効果であった。ここまで25曲以上も演奏してきて、パワフルなドラムがまったく衰えない、その体力に頭が下がるトミである。いつもなら、宮本の煽りでテンポが速くなっていくのだが、今回はトミのドラムのほうがどんどんペースをあげていっている印象だった。
【ファイティングマン】はフェスやイベント、ツアー、新春公演や野音公演の別なく、エレファントカシマシの普遍的な「若さ」を象徴する定番曲になりつつあるようである。これがデビュー・アルバム冒頭曲であるという事実を思い返すたびに、年齢を感じさせない、いや40歳を越えてから逆に演奏が若くなっているような、日本音楽シーンのなかでも希有なバンドのひとつとなっている。30代前半のあの空中分解しそうな危うさが過ぎて、バンドとしての成果が円熟味を増して、いまが最高潮なのではないか、最盛期を毎年更新しているようなここ数年を言祝ぎたい。
 総合司会は、退場の際、またしても投げキッスをしながら「サンキュウ、また会おう」と言って下がったらしい。(典拠:3    ―アンコール―
27. 悲しみの果て

 ここ最近の【悲しみの果て】の演奏位置は、意味をこめてアンコールにしている気がする。「涙のあとには笑いがあるさ」というこのメッセージを強く聴衆に刻印するために、印象に残りやすい後半の後半にもってきているのだろう。「3・11」のあと、ファンやそうではない一般の人たちから、この歌に力をもらったという言葉を受けて、意識的にそうしているのではないだろうか。アレンジで印象的だったのは、蔦谷好位置のオルガンが大きめに聞こえていたこと。

28 so many people(with Horn Section)

 「すっかりやるの忘れてたんですけど、山本拓夫さんに『あれっ、やらないの?』と言われて思い出しました」。ホーン・セクションがもう一度ひな壇に戻ってくる。そしてバンド紹介をふたたび。
 宮本がリフを奏ではじめ「定めなき世の定めだぜ」から【so many people】。結果的にアンコール・パートに移動した【so many people】であるが、意図せずに絶妙なポジションになり、大盛り上がりを呼び込む。しかも、このホーン・アレンジが今回のホーン・セクションとの共演のなかでもおそらく一二を争うハマリ方だったので、大団円を呼び込むような華やかさが会場を包んで、結果オーライとはこのことだと、そのこともすごく思った。「今年もドーンと行こうぜ!」という言葉を残して去っていく。
    ―Wアンコール―
29 . 待つ男

 時間的にはそろそろ追い出しのころなので、客席の明かりが点くかと思いきや、ステージ上のライトが消えず、再登場を待っている雰囲気なので、もう1曲あるのかも、という期待のなか拍手の盛り上がりも待たずに、さっとバンド・メンバーが戻ってくる(数十秒の後)。「ありがとうエブリバディ、呼ばれる前に戻ってきました」。印象的なベースのリフから【待つ男】。「ちょっーと、見てみろこの俺を…」と歌い出したあとで、演奏を止めてやり直す。リズム隊と石くんのギターがズレてはじまったのを気にして、仕切り直したのだろう。カウントを取り直して、もう一度頭から。残る体力ふりしぼっての絶唱。モニターを横に転がして立て、その上に登って客席を見渡したのは、たしかこの曲だったと思う。
 30曲近く演奏してきたバンドとは思えないほど、バックの演奏陣の力強さが、【待つ男】でも感じられた。宮本の歌声もここへ来てもう一度力強さを持ち直した感じであった。「サンキュウ、エブリバディ、ドーンと行け!」のメッセージを残して、マイクを落とし、去っていく。この曲の終りを待っていたとばかりに、すぐに客電が点灯されて追い出しのアナウンスがかかる。(つまり、撤収の時間を考慮するとぎりぎりまで演奏していたということになるようだ)
 モニターを転がし縦にしてその上に乗って絶叫!「富士に太陽ちゃんとある」でバッと赤いライト。シャツは前全開。(典拠1典拠1: 「エレファントカシマシDB」 ラスさん のライブレポートより
典拠2: 「エレファントカシマシDB」 JUNKOKIRARIさん のライブレポートより
典拠3: エレカシブログ「俺の道」 サクさん のライブレポートより
nice!(0)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 4

待つ女

黒のシジフォスさんお元気ですかーっ?
更新されてなくてさびしいです。
エレカシを熱く語ってくれる男子!貴重な存在!
楽しみに待っています!

by 待つ女 (2012-03-06 11:29) 

にゃろ蔵

お久し振りです!
いつも楽しみにのぞかせていただいてます。
最後の更新から日にちがたって少し心配になってきました…
黒のシジフォスさんの読み応えのある記事お待ちしてます。
by にゃろ蔵 (2012-03-07 01:04) 

イシ

こんにちは。
大丈夫ですか~?元気であればいいのですが。
更新ないので、ちょいと不安です。

by イシ (2012-03-14 10:11) 

黒のシジフォス

> 待つ女 さん
> にゃろ蔵 さん
> イシ さん

コメントありがとうございます。
3月19日復帰しました。
いきさつは、更新記事に記したとおりです。
不精と怠惰にくわえて、多弁忌避の傾向をわずらいました。
物言えば唇寒し秋の風
などと申しますが、
「絆」「がんばろう」「復興」だらけの春の宴
激甚災害の跡地で軽口にしゃべる人たちに呆れて、失語しました。
かえすがえすも、自分は囀(さえず)るタイプの人間ではないと、
痛感したしだいです。

ご心配、痛み入ります。以後もお目汚し、ご愛顧ください。
by 黒のシジフォス (2012-03-21 00:41) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。