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EPIC期ファンの終わらない憂鬱 その1 [エレカシファン]

態度の悪い、客を持ち上げない、けんか腰の<生意気>なバンドとしてデビューしたエレファントカシマシ(ことエレカシ)。現在20年キャリアのエレカシには、レコード会社ごとの特長を愛する、またそのときどきの楽曲の傾向に、それぞれファンが存在する。激しい曲のファンもいれば、叙情的でメロディアスな楽曲のファンもいる。

そうしたファンの中でも、コアでならしたEPIC期の楽曲を愛する人たち、彼らにとって90年代半ば以降は憂鬱な時期が続いている。…というのも、EPIC期に似た暴発的な新曲の発表が少ないからである。また、ごくたまに『俺の道』のようなものを見せられると、EPIC時代が思い出されて、それ以降がかえって憂鬱になったりする。

ところで、EPIC期の楽曲のファンは、エレカシの表面的なスタイルに惑わされていることが多い。たとえば、エレカシにラブソングは似合わない、ポップソングとは無縁、メジャーシーン志向はよろしくない、といった誤解である。それらが誤解であることは、バンドの意志を代表する宮本浩次のこれまでの発言を丁寧にたどっていけばすぐに理解できる。

EPIC期も現在も、暴発を一身に体現している宮本であるが、その音楽的経歴の発端はNHKの児童合唱団であるし、その洋楽素養についてドラムの冨永とそのお兄さんによって薫陶を受けたのである。それまでの宮本の音楽傾向は、歌謡曲志向であり、たとえば沢田研二であったり松任谷由実が好きだったりするのだ(後者は彼女の影響のような気がする)。つまり宮本にとってはロック的な要素のほうが、他発(自発に対する、他人発生的)な音楽体験なのである。だとすれば、宮本にとって美しい歌や流行歌のほうが、自分の感性に近いということは、無理からぬことだろう。その宮本がなぜロックを身にまとったのかといえば、単純、女にもてたかったからだろう。

つづく

EPIC期のエレカシのスタンスが事務所から与えられた演出であったことを、最近の幾つかのインタビューで宮本が告白している。これはPONY CANYON以降のキャリアを考えると納得のできる告白で、そもそも宮本が歌謡曲志向の高いアーティストであったことを再認識させてくれた。また、デビュー当時こそがつくられたスタイルで、キャニオン以降のいわゆる<変節>したといわれるキャリアの方が本質だと考えれば、実はエレカシが今のスタンスの中でのびのびとやっていることがすんなりと理解できる。

エレカシはデビューアルバムからラブソングを歌っていたし、たとえば代表曲でも【やさしさ】は、あのファーストのメロウな感じよりももっと甘く切ないバラードだったというから、そのイメージと本質のギャップが思いしれよう。(『rock'in on JAPAN』2009年5月号のロングインタビュー)

おそらく、オーディション荒らしで有名だったエレカシを見そめたプロデューサー兼事務所の社長は、RCサクセションばりの挑発的なステージを彼らの本質と決めつけ、それを伸ばして売り込んで行こうと思ったのだろう。たしかに、時代はバンドブームで、なかでも社会的なメッセージ色の強いパンクバンドが世の中を席巻していた。だから、エレカシをそちらに向けたというのは、プロモーション戦略としてはとても理解できる。ただ、エレカシの認知があがるキャニオン時代の叙情歌路線を思えば、はじめにつけたイメージが足かせになったことは否定できない。
(このインタビューを参照されたい。http://elephantkashimashi.com/release_sp/interview_2.html

エレカシには、EPIC期楽曲のファンがことさらにいう、ささくれて時代に背を向け文学的な孤高の世界で、流行から遠く離れた音楽制作をする傾向がある。だが、ポップな曲をつくって売れたい、ラブソングで女子にアピールしたいという欲求も人並みに備えているバンドなのである。それは、デビュー前キーボード担当の女子がいたり、マネージャーがいたという話からも容易に想像できる。世間一般の男子同様に、モテたいという動機が出発点なら、それもまた当然のことといえるだろう。

さて、そんなエレカシだから、EPIC時代でプロ生活を送りはじめた当初、自分たちの本質とプロモーション上のパフォーマンスのあいだで戸惑ったことも多いと思う。なかでも、客席のライトを消灯せずに公演をしたり、観客に毒づいたりするのは、なかば色づけされた演出であったからこそ、無理にもやりこなしたのだろう。しかし、数年なりやっていけば、その芸風も板につくもので、ここで無茶をしようここで怒鳴り散らそう、などと客を喜ばせるつもりでやったことがいくつもあったと思う。 EPIC時代のエレカシは、観客を困惑させることがよいパフォーマンスだと信じていたのかもしれない。
(このインタビューを参照されたい。http://elephantkashimashi.com/release_sp/interview_2.html


結論は「その2」で述べます。
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