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昨日と明日 [分析]

【明日への記憶】。
エレファントカシマシの40枚目のシングルのタイトル曲である。

ファンクラブの特別イベントで披露されてから、その楽曲の壮大さゆえに、
新アルバムへの期待を高める作品になっている。
タイトルの「明日」は「あした」ではなく「あす」であることが明らかになっている。

このタイトルを聞いてまず連想したのが、2004年に出版された荻原浩の小説『明日の記憶』である。
若年性アルツハイマー症を患った働き盛りの夫と妻が
病気と向き合う姿を描いたベストセラーで、2006年には映画化もされた。

「明日への記憶」と「明日の記憶」は、たった一字「へ」が入るか入らぬかの違いであるが、
とても大きな違いである。

「明日への記憶」:未来へと導く思い出(過去)の力。
「明日の記憶」:未来に覚えるだろう出来事。
          小説のタイトルの意味としては、
          未来のことさえ曖昧になってしまうことへの不安。

萩原浩の小説が漠然とした「明日」への不安であるなら、
エレカシの「明日」はまだ余白のある「希望」のようなものだ。
さて、今回も歌詞について考えてみた。
まず、キーワードである「明日」について。
「明日」というタイトルを冠した楽曲は【明日への記憶】を含めて4曲ある。
【明日があるのさ】(1994)
【明日に向かって走れ】(1997)
【俺たちの明日】(2007)
【明日への記憶】(2010)


案外と作品名には使用されていないのである。
では、歌詞に「明日」をふくむ楽曲はどのくらいあるのか?
それは61曲である。

EPIC (16) PONYCANYON (16) EMI (16) UNIVERSAL (13)
という分布を示している。
一見すると均等のように思えるが、
所属期間が短い、CANYON期と現・所属レーベルUNIVERSALの比率が高いのである。

また、同じように「昨日」について調べてみると、面白いことがわかる。
「昨日」というタイトルを冠した楽曲は今のところ存在しない。
アルバムについても同じである。

では、歌詞に「昨日」を含む楽曲はどのくらいあるのか?
18曲がその回答である。

EPIC (2) PONYCANYON (4) EMI (5) UNIVERSAL (7)

という分布を示すことになる。
これもまた、「明日」と同じような結果になる。
さすがに対語だけあって、「明日」が登場する作品と連動しているのである。
見てもらえばわかるように、
ユニバーサルの「明日」「昨日」使用率の高さが目を引く。
つまり、これは宮本の世界観の大きなキーワードとして、
「明日」と「昨日」が存在を増していることがあるのだろう。
ちなみに、ユニバーサルの楽曲内で「昨日」を使用している作品には、
必ず「明日」という歌詞も同時に登場している。
つまり、ユニバーサルの作品では「昨日」と「明日」がほぼセットなのである。
(すべての作品がそうではない。たとえば【明日への記憶】もう例外)

そこで【明日への記憶】というタイトルである。
「記憶」というのは、そのものでは「昨日」とは関係ないが、
「思い出」と云う風にとらまえ直せば、「過去≒昨日」と読めないことはない。

つまり、「明日」と「昨日」というキーワードが連想的に結びついたのが、
【明日への記憶】ではないかと私は気づいたのである。
残念ながら【明日への記憶】の作品内に「昨日」はないので、
明確に「記憶」=「昨日」とは断定できないが、
その代わりに「昨日」と「明日」の中間地帯である「今日」という語が使用されている。
そう、「昨日」「今日」「明日」である。(【幸せよ、この指にとまれ】)

おそらく、この「昨日」「今日」「明日」は次回作のカギになるテーマに違いない。
そして、【明日への記憶】という作品のテーマでもある。

シングル「明日への記憶」は40枚目のシングルで、
次回のアルバム『タイトル未定』は20枚目のアルバムなのである。
(『DEAD OR ALIVE』をアルバム作品として数えると)

充実するばかりのエレファントカシマシの新作が待たれるばかり。
(了)
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