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タイトルから期待度はあがる [つれづれ]

『悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~』
収録曲
M-1「moonlight magic」
M-2「脱コミュニケーション」
M-3「明日への記憶」
M-4「九月の雨」
M-5「旅」
M-6「彼女は買い物の帰り道」
M-7「歩く男」
M-8「いつか見た夢を」
M-9「赤き空よ!」
M-10「夜の道」
M-11「幸せよ、この指にとまれ」
M-12「朝」(SE)
M-13「悪魔メフィスト」

色違いの記述は個人的に注目している楽曲

今週になって突如解禁された新譜情報。
その衝撃はファンのあいだに様々な反応を呼び起こしているようだ。
いわくタイトルが野暮ったい、いわく売り方がアイドルみたい(ジャニーズ系ということか)、
いわくタイトルに不思議なものが多い。




来月17日に発売が決定した『悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~』。
収録の半分はすでにシングル発売されている既知の作品であるが、
後の半分は今回はじめてベールを脱ぐ、まったく新しい作品である。
アルバムタイトルからわかるように、
今回の作品のテーマは『ファウスト』(ゲーテ作)にインスパイアを受けているらしい。
【悪魔メフィスト】などという直球のタイトルがあることからしても、
アルバム『風』のニーチェではないが、今回はゲーテの影響が効いているようだ。

『ファウスト』の物語を知っている人も多いだろう。
野望を果たせぬまま老いてしまった英知の老博士が、
悪魔と取引をして、若さや政治力と引き替えに、魂を売り渡す話である。
若さを取り戻して思うさま社会で成功する前半と、
悪魔メフィストの策略から徐徐に没落していく後半の対比、
また最後に「魂の救済」によって救われる結末も有名である。

そのモチーフを直に表現している、
【悪魔メフィスト】がどんな作品になっているか、興味津々である。
その他では、【脱コミュニケーション】という作品タイトルに目をひかれる。
「脱」+「コミュニケーション」という、ありそうでなかった組み合わせに、
どういう内容なのかまったく見当がもつかない。
あと気になると言えば、一文字タイトル曲だ。
私の記憶が正しければ、【風】以来の2度目だと思うが、
SEの【朝】もふくめると2曲もいっぺんに収録されている。
しかも【旅】である。
(私の記憶は正しくなかった。名曲【道】を失念していて、“くみたっくん”さんに指摘を受けました。
 そういうこともあろうかと、「記憶が正しければ」という保険を打って置いた。チキン野郎です。10/23訂正)


今回のアルバムは「夕方~夜」のイメージがする楽曲で占められている。
これは前作『昇れる太陽』の「朝~夕方」のイメージに対置しようという、
そういう制作意図が事前にあったのかもしれない。
それから、全編を覆う見事なまでの徒歩のイメージである。
『STARTING OVER』を含め、これまでのユニバーサル移籍後の楽曲のほとんどが、
自動車移動の印象のする楽曲でしめられていたのに反して、
今回は【歩く男】である。
しかも【歩く男】はアルバムのど真ん中である。
印象的なのは、今年の野音で披露された曲順通り、次に【いつか見た夢を】が配置されたこと。
考えてみれば、シングル発売の順序を並べてもそうなる。
すでにこの順番で固まっていたものを、野音でいち早く披露したのかもしれない。

【九月の雨】も気になるところではある。
太田裕美の作品ではない(松本隆・作詞の有名なヒット曲があるのだ)。
【四月の風】に対置して、九月は「雨」と来たわけである。
「雨」といえば昨年の野音であるが、もしかしたら着想はそこにあるのかな、と思うのだ。
「九月の雨」というのは、よく使われる歌のタイトルなのだが、
おそらく嚆矢はジャズの名曲「September in The Rain」にある。
よくある【九月の雨】というタイトルを使って、どんな世界を描いているのか?
この曲への興味も尽きない。
(「君に会えた四月の風」に対して「九月の雨」にはどんな出会いや別れがあるのだろうか?)

最後にアルバム作品名のサブタイトルに触れたい。
「そして、心に火を灯す旅」。
これは、思うに、『悪魔のささやき』を補完するためにつけられた「解説」みたいなものではないか?
メインタイトルは『ファウスト』由来のものであり、
サブタイトルは自らが持つ(悲劇)『ファウスト』への回答を表しているのではないか?
「悪魔のささやき」という言葉で思い出すのは、
【甘き絶望】のなかの「甘いささやき」である。
それは、「絶望」と置き換えてもよい感じさえする。
そうである。
「そして、心に火を灯す旅」というサブタイトルには【甘き絶望】の世界観が映っている。
【甘き絶望】のなかにこんな歌詞がすでに提示されている。
「心の中に今の自分を描く旅 日々を超えて」。
「心に火を灯す」というイメージは、【女神になって】や【ハロー人生!!】のそれとも繋がる。
だが、サブタイトルから私が受けるイメージは【甘き絶望】なのである。

いつかのライブで【甘き絶望】をシングル化したいと提案して、
制作スタッフから却下された、と口惜しそうにMCをしていた宮本をよく覚えている。
それをこうしてカタチを換えて、アルバムのメインテーマとして実現したのではないか。
そんな推理を浮かべているのである。
アルバム・タイトルで私が直感したのは、
新作のテーマが【甘き絶望】を発展させた内容であると言うことだ。
まだ、半数の作品を耳にしていないので断言はできないが、
おそらくそれほど的を外してはいないと思う。

それにしても『悪魔のささやき』である。
ちょっと聞くとヘビーメタルかハードロックの洋楽タイトルである。
レコード会社は「悪魔」という響きのマイナス面を嫌って、
違うタイトルにして欲しいと思ったかも知れない(サブタイトルはその証しか?)。
しかし、このタイトルにしたという決断力。
これは、「涙のテロリスト」→「笑顔の未来へ」というタイトル変更へのリベンジだろうか。
『悪魔のささやき』に比べたら、「涙のテロリスト」はむしろ可愛いくらいである。

マーケティング的な常識で言ったら、
こんなにもマイナス要素をふくむタイトルを命名することは冒険が過ぎるはずだ。
だが、今のエレカシならばそれを押し通せるということが、今の彼らの到達点である。
一見、非常識に思えるタイトルでも、作品タイトルに見合う内容が備わっていれば、
聞き手はそんなイメージには引きずられない、という宮本の信頼が伝わってくる。
これはエレカシの聞き手への挑戦であり、またレコード業界への挑戦でもあるのかもしれない。
なぜなら、タイトルだけで見ると、シンプルすぎたり、やや野暮ったいくらいの言い回しがあったり、
「売れないよ、こんなもの」的に袖にされそうな内容の近作において、
シングル「俺たちの明日」や「桜の花、舞い上がる道を」でもわかるように、
エレカシは販売実績を残してきたのである。
『昇れる太陽』もエレカシの販売実績で5本の指に入る好成績のアルバムとなった事実もある。
まさしく、エレカシ大驀進の勢いが、新作に詰まっているような気がする。

それらについて、宮本自身の口から語られているだろう「3万字インタビュー」が、
月末発売の『JAPAN』(ロッキンオン社発行)に掲載されるというので、楽しみに待とう。
この作品は宮本(やエレカシ)からリスナーへの挑戦であるので、
そこでも、すべてを明かしたりはしないと思うが。
でも、エレカシを聞いてきた共感者には、わかってしまうものなのだろう。
(了)

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コメント 3

くみたっくん

こんにちは。
ブログ記事の深い解析を読んで、ますますアルバムが楽しみになってきました。
やっぱり、その時期に傾倒している物事の影響が曲にも現れるんでしょうね。
そんな素直な表現がいいなぁと感じています。
一文字タイトル曲、「道」もありますね。
とにかく、今回タイトル曲だけでも気になるものが多いです。
そうそう、いつの間にか正式に20作目になりましたね♪

by くみたっくん (2010-10-23 12:59) 

黒のシジフォス

> くみたっくん さん、こんにちわ。

すみません、名曲【道】を失念していました。
というか、この間の日比谷で聴いたばっかりなのに。
本文を訂正しておきます。(間違いは残して、注記で訂正)

しかしタイトルだけで判断していると、
作品の音楽性に裏切られるのがエレカシのサディズムですね。
【おかみさん】とか【化ケモノ青年】とか【地元のダンナ】とか。
曲を聞くとタイトルに納得させられる説得力があるんですから。

“くみたっくん” さんは、どんなタイトルの曲に注目されていますか?


by 黒のシジフォス (2010-10-23 13:19) 

くみたっくん

こんばんわ。
注釈入りの追記、なんだかこそばゆいです。。。
でも後で、「涙」も「絆」もあることに気付いてしまいました!
(ひらがなだと3文字なので油断してました・・・)

注目しているタイトル曲、と訊かれると悩んでしまいますね。。。
正直、どれも気になりますが
「moonlight magic」というのも、他のタイトル曲と雰囲気が違う気がするし
アルバム1曲目だし、いろんな意味でワクワクします♪
by くみたっくん (2010-10-24 01:24) 

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