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タイトル考(その2) [企画もの]

タイトル考の第2弾。久しぶりの続編である。
今回はカタカナのタイトルについて考察してみたい。

カタカナ・タイトルを持つ曲は、現在16曲ある。
副題つきの楽曲もふくめると、もう2曲増えて、18曲である。
はじめて登場したカタカナ・タイトル曲は、
シングルでいえば【デーデ】、
アルバム収録曲でいえば【ファイティングマン】である。

いちばん最近の曲では【ネバーエンディング・ストーリー】ということになる。
レーベル別に集計すると、
EPIC(5) PONY CANYON (1) EMI(10) universal(3)

ちなみに、この数字はカタカナ「のみ(only)」の楽曲数である。
その他の文字種を含む複合タイトルを数えると、
少し印象が変わるので、詳細を検討していこう。

カタカナを含むタイトルには以下の種類がある。

カナ・タイトル: 「カタカナ」のみ。(18曲)
かな+カナ: 「ひらがな」と「カタカナ」。(2曲)
漢字+カナ: 「漢字」と「カタカナ」。(9曲)
アルファベット+カナ: 「アルファベット」と「カタカナ」。(1曲)
漢字+かな+カナ: 「漢字」と「ひらがな」と「カタカナ」。(6曲)
総計36曲。


外来語由来のカタカナ語をふくむタイトルが、23曲。
その他の造語や日本語由来のカタカナ語をふくむタイトルが、13曲。

それらのすべてを眺めて思うのは、
エレファントカシマシらしいタイトルは、
「漢字」+「カタカナ」という組み合わせにあるということだ。
分類的にいうならが、[漢字+カナ]と[漢字+かな+カナ]である。

カタカナのみのタイトルの場合、
【デーデ】や【ガストロンジャー】などの造語をのぞいて、
タイトルのみのインパクトはない。
むしろ、その場合の印象は楽曲そのもののインパクとだといえる。
【ファイティングマン】や【シャララ】や【シグナル】など、
一般的な通用語である英語は、それ自体はありふれていて、
無色に近い印象だが、
力強い楽曲のタイトルの場合は作品そのものの印象が、
そのタイトルにより焼き付く感じがする。
奇を衒わないことによって、帰って印象が増す効果があるのだろう。

次に、エレカシらしいタイトルについて触れたい。
ひとつは日本語をあえて「カタカナ」表記にする、
【ゴクロウサン】、【ヒトコイシクテ、アイヲモトメテ】、【ココロのままに】
【マボロシ】、【化ケモノ青年】などである。
これは近代文学を愛好している人ならばわかると思うが、
いわゆる「漢文調」文体の影響である。
戦前まで、日本の文学は漢学の影響下にあり、
それはつまり漢文の「読み下し」風の文体を愛好していた。

「斯之如キ処断致ス間敷候コト」
(かくの・ごとき・しょだん・いたす・まじく・そうろう・こと)
一例を示せば、このような文体である。
このような「漢文調」の場合は、
「読み下し」であるだけに、カタカナを好んで使用した。
「化ケモノ」などというのがまさにその典型である。
【流れ星のやうな人生の】の「やうな」ではないが、
「てふてふ」(ちょうちょう)などの「旧かな」遣いというのもそれである。
「旧字」「旧かな」遣いというのは、「現代かな」口語体からすると、
往時をしのぶ古風、「近代古文(私の造語)」とでも呼ぶべきものとなりつつある。

「候(そうろう)」体などという文章は、
味わい深くはあるが、一般人には読みにくくてしようがない。
また、「てふてふが一匹韃靼海峡を渡つて行つた」のやうな文章は、
余程わかり難さが過ぎるといふものに御座候。
その昔、両親の棚に漱石全集の「旧かな」表記を見つけたとき、
「らんたふとう(倫敦塔)」とは如何なるマジナイかと訝(いぶか)った思ひを、
大方の人々は感ずるものに御座候。

エレファントカシマシ(宮本浩次)の深淵部にはそうしたものがある。
ということは、押さえておいた方がよい。
ただ、作品を味わうときに、
「ような」を「やうな」にいちいち変換をする必用はないだろう。
そもそも、表記違いは文学的な修辞(レトリック)に過ぎず、
作品の根幹にある本質とはやや距離を置くからである。

「祷ってゐた」が「祈っていた」であっても、なんら不都合はない。
ただ、「祷ってゐた」や「化ケモノ」という表記の奥に、
近代文学や「近代古文」に対する憧憬と敬愛が示されていることは、
覚えておく方がいい。
宮本浩次という人は近世・近代の文学を吸収して、
現代のロックに変える戯作者であるのだから。
その脇に「つたや」(蔦屋重三郎は浮世絵や草紙の版元)控えているのも、
これもまた中々に興趣深きコトに御座候。


注1.「てふてふが一匹韃靼海峡を渡つて行つた」。
    これは安西冬衛という詩人の一行詩である。
    アヴァンギャルド。
    これは昭和初期に流行った形式。
    北川冬彦という別の詩人の一行詩には、
    「体温表」というタイトルの物があり、
    「鼻血をだしている」の一行しかない。


分類の詳細(2010年2月現在)

「カナ」
ファイティングマン / デーデ / ゴクロウサン / サラリサラサラリ/ シャララ / ヒトコイシクテ、アイヲモトメテ / ガストロンジャー / ゴッドファーザー / コール アンド レスポンス / マボロシ / クレッシェンド・デミネンド-陽気なる逃亡者たる君へ- / ラスト・ゲーム / ディンドン / イージー / パワー・イン・ザ・ワールド / シグナル / リッスントゥザミュージック / ハナウタ~遠い昔からの物語~ / ネヴァーエンディングストーリー

「かなカナ」
ココロのままに / さよならパーティー

「漢字カナ」
太陽ギラギラ / ドビッシャー男 / ハロー人生!! / 勉強オレ / ロック屋(五月雨東京) / 化ケモノ青年 / 脱コミュニケーション / 悪魔メフィスト / 東京ジェラシィ

「アルファベット・カナ」
ゲンカクGet Up Baby

「漢字かなカナ」
真冬のロマンチック / オレの中の宇宙 / 星くずの中のジパング / 今だ!テイク・ア・チャンス / 地元のダンナ / 真夜中のヒーロー

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