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随筆集『東京の空』の読書メモ [記事&インタビュー]

宮本浩次(エレファントカシマシ)『東京の空』

昨日のお茶濁しをしばらく続けようと思ったのだが、
自分の机の端にあった備忘録のなかに、随筆集『東京の空』の読書メモがあり、
これが存外に面白かったので、掲載してみようと思う。
宮本浩次の名言と共に、作品世界のルーツや解説と思われる記述も抜き書きしてあり、
興趣深く読んだ。
抜き書きした箇所をページと共に列記してあるので、
お持ちの方は手元で指摘ページを読み、
まだお持ちでない方は、ぜひご購入の上、文脈のなかで抜き書き箇所を楽しんで頂きたい。




宮本 自動車免許取得 1999年8月下旬(9月まで1ヶ月で6000km走行) 33才(12p)

車線変更で入れてもらうと人の3倍手をあげる(p22)

「きっと四十になっても五十になっても、我儘でおっちょこちょいのまま暮らしてゆくに違いない」(p22)

自動車を運転して箱根に行くのが好き(この時点で3回)(p26)

『good morning』の制作を通じて
「人生はありのままのその姿を受け入れるための作業であるということを確信することとなった」(p27)

「箱根を薄汚く思っていた俺は、広重の浮世絵の風景にあこがれる現実逃避の化け物青年だった。」(p27)

「音楽の中においてのみ自由であれば良い」(p28)
(1)ロックはスタイルではない
(2)ロックは破滅ではない、まして頽廃ではない
(3)ロックは生命を肯定する
(4)すなわちロックは我々を覚醒させる


「各地にお城あり。お城にお国柄あり。俺が今回ツアーで回った町の多くは城下町であった」(p83)
【東京ジェラシィ】の下敷きか

「俺の好きな、あの東京のイメージは消え去りました。「武蔵野」という曲が鎮魂歌。」(p34)

「この豊かな島国を愛する限り、我々はあの愚(森首相就任過程)を繰り返すに違いない。」(p35)
島国のルール(日本のルール) → 我々に豊かさと曖昧さを与えつづける

『good morning』の自己評価
「潜在的に、優れたポップ・ミュージックとして受け取られる可能性を多分に含んでいる。
しかし、このアルバムが同時に持っている潜在的な革命性は、それが先端的で根本的であるが故に、
残念ながら現在の多くの日本人が臨む方向性とは、ずれていたのかもしれない」
(p40)
「何でも来い」という心境に俺がなった。(p41)

「車に乗っていると、何ともこの東京の狭いことよ。」(p42)

「ひとり暮らしを始めた頃(二十五歳位)」(p44)
ベッドを使い始める(2001年くらいでそのベッド駄目になる)
ゴキブリへの恐怖体験、クーラーのない真夏のひとり暮らしの部屋

「俺は日本語オンリーの男である」(p50) 「ロック屋稼業」(p50)
      ↓
洋楽ロックは歌詞を含めて“一つのサウンド” 歌詞はなおざり
洋楽ロックを一番熱心に聴いた十代の後半
同時に日本の文学・歴史・西洋哲学をむさぼり読んだ。
『文藝春秋』『朝日ジャーナル』を読んだ。
一番無理なく愛読できた、太宰治の小説が好きになった。

思春期総仕上げの宮本に大切だったもの
ビートルズ、ツェッペリン、ドアーズの洋楽ロックと太宰治。

「サウンドの傾向に関してはそういった洋楽ロックから取り、
 歌詞に関しては主に日本の文学から取りましたよということなのだ」
(p52)

日本人は自覚のないうちに欧米人に一時「勝利」した:高度経済成長

宮本の英語嫌いのなかには、欧米への卑屈な気持ちがどこかにあった。

「俺も含めて日本の人は老いも若きも写真撮影することが好きだ」(p56)
名所図絵と同じ場所で同じ構図で写真を撮る

『断腸亭日乗』を「まるで詩のような文語文」と推薦

宮本に自動車のハンドル操作「オーバーステア」「アンダーステア」を教えたのは、
「プレイステーション二(ツー)」と『グランツーリスモ三(スリー)』『首都高バトル0(ゼロ)』
そこでは「死に急ぐ撃沈野郎」だった。

「俺個人は埼玉県が非常に好き」(p70)
あらゆる風景が新鮮

「俺はこの土地を歩いた時に、観念的にまるで奈良のようだと思った。」(p71)
中学生のときには埼玉県の洋品店に服を買いに行っていた。
大宮フリークスが好意的に接してくれた。

「半分は埼玉県人みたいなものだった」(p72)

1990年「騒然とする世間に己を対比させて」「夢のちまた」を作った(p76)
静謐と叙情性 → アルバム『ライフ』 小林武史へのプロデュースを依頼

「俺はグローバルという言葉が好きではない」(p80)

「売れないミュージシャンは政府テンプクを目論む不穏分子になりかねないが、
ひとたび売れると余程のエネルギーが無い限りは、毒気をぬかれたやさしい大人になるのである」
(p81)

「グローバリゼーション」 :勝っている時にこそ使う言葉。
                 “自由”という言葉の現代版。

やがて日本は宗教や言語を捨ててそこに入って行かなくてはならないときに、
お追従のように言うことではない。

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FACT

非常に興味深いです。

この本、読んでみたいですが、絶版ですかね。

文中、意味からすれば、なおざりよりおざなり?

いつも楽しみにしています。


by FACT (2011-06-11 05:58) 

黒のシジフォス

FACTさん、こんにちわ。
随筆集『東京の空、』いつの間にか絶版のようですね。
ただ、版元がロッキング・オンなので、ときどき再版かけますよ。
一時絶版状態になった『風に吹かれて』、いま再版が売ってますからね。
夏フェスか年末フェス前あたりに、再版がかかるとよいですね。

「なおざり」 → 「おざなり」 の指摘ですが、
抜き書きですから「なおざり」であってるんです。

文中では、「(時にはサウンドよりも)重要である歌詞をなおざりにして、
“洋楽ファン”を自称する日本人がいるが」、自分もその一人だったとあるのを、
メモですから「つづめ」たんですね。
基本的に抜き書きと要約ですから、引用は原文ママと思って下さい。
地の文は私の要約なので、もしかしたら間違いあるかもしれません。
「なおざり」に関しては、原文の通りです。

あとFACTさん、たまに図書館に収蔵されていると聞くので、
公共図書館に予約してみるのも手ですよ。
市内、県内(都内)の収蔵書ならたいてい取り寄せ予約できますから。
by 黒のシジフォス (2011-06-11 12:21) 

FACT

ご説明ありがとうございます。

基本の音楽だけでなく文章からも宮本浩次の世界観を味わってみたいと思います。
by FACT (2011-06-12 06:13) 

黒のシジフォス

FACTさん、最近は絶版が早くて困りますね。
紹介しておきながら、絶版だと、なんだかこちらがすまなくなります。
「時代小説」でおすすめしている、『御家人斬九郎』も絶版なんですよ。
TVシリーズもやってた名作なのに。近頃の出版社はよくわからない。

図書館や古本屋をあったって、掘り出し物があることをお祈りします。
ぜひ一度は読んで下さいね。
by 黒のシジフォス (2011-06-19 21:28) 

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