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本歌(ほんか)取り [つれづれ]

英国でかつての人気バンド「STONE ROSES」の再結成がかなりのビッグ・ニュースになっている。
全世界的に人気のあったバンドであるし、そのフォロワーがまた人気ミュージシャンに多いこともあるのだろう。
そのことがエレファントカシマシと何の関係があるのか?
知っている人は知っていると思うが、
STONE ROSESの2nd Album『Second Coming』収録の「Driving South」が、
エレファントカシマシの某曲にそっくりであると有名なのである。
いわゆる元ネタと思われている楽曲のひとつなのである。

あるミュージシャンの作品が、すでに発表されている誰かの楽曲に似ると、
剽窃(ひょうせつ)であるとか、盗作であるとか、中傷されることが多いが、
私はあまり「似ている」こと、あるいは「真似」したことは、問題ではないと思う。
というのは、勉強や学習というのは、たいてい「引き写す」ことから始まるから、
「真似ぶ」→「学ぶ」という言葉を生んだのである。

芸術分野や工業製品では、「真似る」ことをとくに「コピー」と呼んで忌み嫌うが、
本来はそんなことを咎(とが)めだててもしようがない。
何しろ、歴史というやつは前の誰かがやってきた後に積み上がるのだし、
文化というやつは既存の知識や文明というやつが漸進(すこしずつ進む)ことにすぎない。
石器から金属器になる過程、あるいは縄文式土器から弥生式土器になる過程、
それはみんな「コピー」が広がったから生活が前進したのであり、
古代の人たちは、隣ムラの奴らが俺たちの弥生式土器を「盗んだ」とは言わなかったのだ。
そんなケチくさいことを言い始めたのは、近代の著作権ビジネスが成立して以後である。

つまり何が言いたいかといえば、
元ネタとおぼしき作品と真似たとおぼしき作品のふたつがあって、
どちらを好んで聞くのか、あるいはどちらも好んで聞くのか、
あるいは全然どちらも聞かないのかは、聞き手の取捨選択である。
その作品が好きか嫌いか、それで聞くか聞かないかを決めればいいのであって、
元ネタがあるからそちらのが優れているからそちらを聞くべきとか、
引用曲だから優れていてもこちらは聞くべきではないとか、
意味不明な道徳論をぶってもしかたないと考える。
そもそも、一から十までオリジナルなものなんてどこにもない。
まったく、文化や文明はバリエーションが増えてこそ発展するので、
とくに芸術分野では「真似」などというのは、どうということはない。
ただし、「真似」たときは「真似」たというのがいさぎのよい姿勢だと思う。
「真似」たくせに「オリジナル」ぶるのがいちばん性悪である。

和歌の世界には「本歌(ほんか)取り」という伝統がある。
元歌の表現を残しつつ、そこに新たな言葉をたして、新しい作品にするという手法だ。
それは「オマージュ」の側面と、本歌(もとうた)への返歌の意味を持つ。
つまり日本の芸術世界では、「真似」は「コピー」ではないのである。
この辺の考え方は石川淳の「模倣の効用」という随筆に同様のことが記してあって、
なかなか参考になった。

アナトール・フランスいわく
「蟻が砂糖のかたまりをひっぱるように盗むな、蜜蜂が花から蜜を吸い取るように盗め」と。
石川淳いわく
「芸術上の方法についていえば、厳密には方法を盗むということはまあできない相談だね。
 作者みずから意識しないような方法を、他人が意識的に盗むとはどういうことか。
 いや、どうということでもない、単に無意味だよ。」

パソコン上でデジタル・データを写しって寸分たがわぬものをつくるのと、
よその芸術家の作品から「真似」て、模写よろしく写し取るのでは、
まったく意味がちがう。
手まね足まねでやる模写というやつは、写したあとに個性が出る。
個性が出たらそれはもう「コピー」ではない。
レゲエの例を引くまでもないだろうが、真似は盗作や剽窃とはまったくちがう。

さて、エレファントカシマシにおいて、元ネタがどんな意味を持っているのか?
それは当人たちにしかわからないし、無意識レベルの模写だとすると、
当人たちにも意識しない「真似」になるのかもしれない。
文章にしても演奏にしても、誰にも似ないようにやることなんてできない。
自分が好きな誰かの影響を受けて成立するものである。
宮本浩次はSTONE ROSESをどう思っているのか?
たぶん好きなのだと思う。影響を受けているのが丸わかりだからね。

STONE ROSESの2nd Album『Second Coming』収録の「Driving South」


STONE ROSES「So Young」もどことなく『風』収録のあの曲に影響を与えている気がする。

たまたま私が見つけたおそらく元ネタの1曲。

Jesus Jones - Right Here Right Now
あの曲とか、あの曲にリズムトラックが似ている気がする。
『good morning』のなかのあの曲と、
『ライフ』のなかのあの曲である。
(了)

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