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精読「ワインディングロード/東京からまんまで宇宙」その2 [企画もの]

つづいて【東京からまんまで宇宙】を精読する。

冒頭の唐突な疑問、「光めざすのはなぜ?」。
これもゲーテとつなげて私は解釈している。
(ゲーテは臨終の際に「もっと光を」というような言葉を発して没した)

歌詞に登場する夏・冬・春は、
おそらくフェスや大型イベントから連想したのじゃないか、
そんな気がする。
夏はジャパン・フェスやサマーソニックなどなど、
冬はカウントダウンジャパンやレディオクレイジーなどなど、
春にもARABAKIやSLSなどなど。
秋はGGとかあるにはあるのだけれど、基本的にはほとんどない。
ここ最近のスケジュールでは秋は野音やレコーディングという印象である。
つまり、夏・冬・春なのはそういうことなのではないか、と推測している。
だから、「必ずまた帰ってくる」というのは、
各地のイベントの茨城や石狩湾や山中湖や大阪や、
それら地元の東京とはちがう場所のファンに言っている気がする。
確証はないけれど。




ではなぜ「東京から」なのか?
この疑問は『Bridge』の記事のなかで明かされたタイトルの秘密、
当初は「日本からまんまで宇宙」だった、という記事で理解できる。
宇宙に届くのに、出発点は「東京」でなくてもよかったのである。
だから「東京」は現住地の記号に過ぎない。
聞き手によって「大阪」でもいいし、「名古屋」でも「福岡」でも「佐賀」でも、
どこでもいいのだと思う。
【東京からまんまで宇宙】の「東京」には、
【武蔵野】の歌詞のように、深い意味はない。
類例としては【パワー・イン・ザ・ワールド】や【ハロー人生!!】がある。
あれらの歌詞中の「東京」は今ある場所の記号にすぎない。
だからライブで言い換えても何ら歌詞の世界観に支障が出ないのである。

【東京からまんまで宇宙】は近年にない作風、
キャリア中のどの時代に近いかといえば、アルバム『東京の空』である。
このことはすでにどこかで述べたと思う。
それは歌詞の間白のところに合の手(「よっ」とか「はっ」とか)がある、
そのことがとても特長的だからである。
ファンならば、【男餓鬼道空っ風】や【極楽大将生活賛歌】などをすぐに連想してしかるべきである。
その連想の正しさを証明するように、メディア露出のなかで、
たしか『ローリング・ストーン』誌だったと思うが、
【極楽大将生活賛歌】を宮本自身が類例に出していたと記憶する。

その記事と【極楽大将生活賛歌】というヒントを得て、
ネガティブな歌詞が節の最後で「べらんめえ」調でひっくり返される、
その小気味よさをスッと飲み込めた。

【東京からまんまで宇宙】より
「蜃気楼が揺れる」 →  「ああ 頭にくるぜ」
「期待と不安に押し潰されそう」 → 「俺は今を生きる」
「消せやしない孤独の闇」 → 「ああ やりきれないぜ」
「ため息の人生ならば頼りにならぬ」 → 「俺が舞い上がる」

【極楽大将生活賛歌】より
「貧乏だって無力だってこの世のエキス」
「お前が死んだって何やったって誰も何にも言わないよ
やれるもんならやってみろ」

さて、つぎに「宇宙」という突拍子もない表現について考察。
エレファントカシマシの世界に「宇宙」が登場したのは、
おそらくアルバム『good morning』の存在が大きいのじゃないかと思う。
SFや天文学でいう「宇宙」ではなく、
「果てしのないもの」「(地上ではなく)頭上の広い世界」というような、
象徴的な意味の「宇宙」で、ロケットで惑星探査へ行こうなどという、
無重力圏や真空世界のことを指していないことは明らかである。

そこで、【東京からまんまで宇宙】の世界観を総合すると、
世の中に物憂いことは尽きないけれど、
「極楽大将」のように気分次第、気の持ちようで、
「東京(今住んでいるところ)」から瞬間に「宇宙(果てしなく広い世界)」へ行くことだってできる。
宮本節に読み換えれば、「くよくよするな、ドーンと行け!」に尽きる。

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